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生命力の探求 8

selective focus of green cacti

植物は動物のように高性能の目や精密な嗅覚、聴覚などの感受性がない。
それらの刺激を何であるか識別する中枢、脳をもたない。

それどころかこのような外界の刺激情報にもとずいて、脳の司令下にある筋肉組織ない。
にもかかわらず植物の原子感覚は人が思うほど単純で下等なものではない。

植物は動物が動く地中の振動や、体温、微妙な呼吸音、各種の動物が放出する固有の周波数などを分析し動物の心理状態さえ察知するのだ。

危険か、微妙な危険でない安全な動物がであるかを識別する力がある。

ソテツが産み出した配糖体サイカシンは動物細胞のDNAに重大な障害を与えかなり確率でガンを誘発する。
さらにそれは神経で活動する動物の中枢神経を麻痺させて走行困難にさせる神経毒でもあった。
ソテツは動物の臓器や器官にガンを起こさせ天敵である動物を衰弱死させるのだ。
しかし動物にガンを起こさせ死亡させるには時間がかかりすぎる。
そこでソテツは即効性のある神経毒となると物質を複合的に製造したと推測できる。

ある意味で石炭紀から数億年も生存してきたソテツの生命力は天敵から身を守る毒の製造であった。

地球上には数多くの有害有毒植物が存在しているが、それらの植物もトリカブトやソテツと同じく、殺傷能力のある化学物質を合成し自らの命を守ってきたといえる。

しかし一方どの植物も致命的な毒の製造に成功してとは限らない。
だがそれでも可能な限り、ありとあらゆる防御方法を考えだしたのだ。

熱帯の砂漠地方に自生するサボテン類は茎と葉に鋭い刺毛を発達させた。
一度この針に刺されると、神経をもつ動物と昆虫は苦痛を味わう。
痛い目に合うと動物と昆虫はそれを学習し、二度とそのサボテンには補食のために接近しない。
これもサボテン属が考えだした敵に対する有効な忌避方法であった。

ある植物は茎や葉に強烈で刺激的な臭気物質を貯蔵し補食する動物と昆虫を遠ざけることも考えた。
ヘクソカズラやクサギの強烈な悪臭は嗅覚が敏感な動物や昆虫を威嚇させて忌避させた。
あるいはその異臭に毒があるのではないかと感じて補食活動を中断させて二度とこの植物を食べない動物もあるだろう。

文:中村臣市郎

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