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巨大な鎮痛剤シシウド

場所は富山県岐阜県高山に近い山岳地帯であった。
早朝から岩の洞穴ををでて壮絶な薬草探索に入ったのてある。
かなり深く長い渓流の浅い透明な水の中を道代わりに歩いていた。
渓流は渓谷の最深部まで奥深く続いているようだった。
岩はそれほど硬くはないが所々にき裂が深く走りその小さな窪の土砂にシダ類や大きな葉を展開するイワタバコなどが生えていた。
渓谷の上には高木のホオノキが高く茂りその上をマタタビが埋め尽くしていた。
猫の大好物のマタタビであった。
猫を興奮させ陶酔させる物質はマタタビ酸でこれは薬理作用として猫の脳の中枢神経を麻痺させる働きがある。
そこで猫はマタタビ酸に酔ったようになり戯れるのだ。
これは猫科特有のもので他の動物には見られない。

これも液体免役の一種なのだろうか?
だとすれば動物の本能と神経を麻痺させ捕獲活動を一端停止にさせる間接的な防御物質なのか。
マタタビラクトンという精油でさえ特殊な芳香があるがこれに反応するのは猫化の動物だけである。

猫とマタタビ、過去にそれに見合う関連があったと考えられるが肉食動物の猫がマタタビの実を食べていたとは考えにくい
だがある時期2種の生物に何かの理由で異常な変異が起こり猫はその時期にマタタビの果実をエサにしたことがあった。
それでマタタビはネコ科の動物を敵と意識してメッセンジャー核酸がある物質の構成元素を集めだしたのだ。
それは炭素とか水素、酸素などの元素であったろう。
その元素の分子を捕集して意図的に有機的な生理活性作用がある物質の構造体を創造した。
それがマタタビ酸、マタタビラクトンアクニジンなどの薬理物質なのだ。

むろんこらは私の幼稚な仮説である。
マタタビがありそうだと感じてさらに頭上のツルに覆われている葉を見上げた。
とてつもないマタタビの実が垂れ下がっている予感を感じたのだ。
その周囲の頭上のツルにあるヤブを綿密に眺めるとスモモのようなおおきな実が鈴なりになっていた。
何しろ青く未成熟であるからうまいとは思えないがなんとなく猛烈に食欲をそそらす形だったのだ。
驚くことにしばらく丹念に観察するといくらでも葉の影に隠れたマタタビの実が枝先にしをれるほど無數にたれさがつていた。

「ウエウエツ、これは凄い」

と唸り眼球が仰天した。

「クオオオオオッ、オオオオオオオオッ」

胸のそこに蓄積した狩猟本能が火柱になって燃え盛った。
サソリのような攻撃的な態勢になりすでに必死で垂直の渓谷の垂直の岩盤を猿のように爪でき裂にひっかけて登っていた。
しかし滑落した重症の打撲の痕跡が生々しくあり無理はできない。
しかし一端火が燃え上がる狩猟本能は見境がない。
マタタビが頭上に登っていた枝を引き掴んでたぐい寄せホオノキの幹を必死で牙を出して掴んだ。
外に向かって1センチほど眼球が仰天して飛び出していた。

「ウオオオオオ、グオオオオオ」

声帯が一万回ほど振動した。

「クェツウエッグモっ」

勢いのあまり野獣になって今度はさらにマタタビを手で掴んで懸命に口の中に入れ込む。
バリバリとマントヒヒのように歯をむき出して食べる。
だがその味は途方も無いほど苦く辛いものだった。
したが耐えられずヒィシィ詰めきながら左右にくねった。

「これはまずい」
「これは物凄くよくない」

と突然胃袋があまりのまずさに拒絶反応を起こして身悶え始めた。
空腹であれば何でも食べて詰め込む大容量の胃袋も流石にこれだけは食えないらしい。
「これはまずい」と何度もいった。

やがて何か食い物はないかと必死で探し始めた。
浅黒い唇を歪めて泥が詰まった口から濃密な粘着性のあるヨダレをを垂らしながら、そこじゅうを徘徊しうろつきまわり本能の委ねるまま、浅い渓流の水をはねがらバシャバシャと渓谷の奥まで様子を見に行った。

とその時だった。
小高い砂丘の丘の上になにか白いあごひげをはやした羊のような物が目先に浮かんだ。
全体が白く長い毛で覆われ、特に顎のヒゲが長い、骨格も太く整然とし霊山に生息する霊的な動物のように顔も精悍であった。
まるで哲学者のようだ。
ニホンカモシカである。
むろん天然記念物てあるから捕獲は禁止されている。
捕まえてもって帰り置物にでもしようと狩猟本能が働いたがなんとかこらえた。
まるで中国の連峰に生息する神の使いのように神秘的で風格がある。
まるで掛け軸の絵から飛び出してきたように幻想的な光景だ。
これは確かに日本画になるなあ。
これはいい。
癒やしになるなあ、と渓谷の日本画のような美しい光景を眺めながらつぶやいた。
自動車の無機質な機械音と排気ガス、騒音と喧騒の電磁波に支配された文明には存在しない現象だ。
だが6年前までは地獄のようなその場所にいたのだ。
だからといってここが特別に永遠不滅の天国というわけではない。
ある信念と頑固な意志、無限の探究心がなければ一日で生き地獄に変わる環境である。
見方によっては一刻もいたくない場所だ。
トリカブトや猛毒のマムシ、ヤマカガシ、場合によっては死ぬこともあるオオスズメバチの毒、一度落ちれば奈落の底に沈んで二度と浮かんでこれない渓谷の谷間数百メートルの岩の断崖絶壁、悪霊がさすらう漆黒の闇。
猛獣のクマと走ったら高速の機械に変貌するイノシシ、猛毒のドクゼリ、ドクウツギ毒液と猛獣と悪霊が無數に徘徊する泥沼と原生林に覆われている。
住めるところろではない。
一刻も速く移動したいが生命力の探求の旅にでたばかりである。
結論がまだでていないのだ。

こんなチャンスとタイミングは滅多にないからしばらく2時間かけて必死で渓谷の上にかぶさるように鈴なりになっているマタタビの実を小判鮫になっている食いついていた。
ここの実は通常より2倍も3倍もデカイ。
その異常な大きさに衝動的な興奮を感じてマタタビの太く長いツルを掴んで実を採集袋に懸命に入れ込んだ。
別に食えるものではなかったが収奪して保存しておけばいつかは役に立つのではないかと感じたのだ。
入れ物は本格的な米を保存する非常に丈夫な荒布でできた米俵だったのだ。
ここまで大きいと100キログラムは軽く入りそうだ。
だがさすがに100キログラムはとてつもない量なので40キログラムほどにして袋に抑えて圧縮して詰め込みクズの太いツルでほどけないように結んで背中に担いだ。
たった40キログラムであったが重症を負ったばかりの全身打撲の後であるから無理はできない。
40キログラムのマタタビの実が鋭く尖った岩のように背筋の筋肉をミシミシと締付けてくる。
時間が長いとこれぐらいの重さでもジワジワと筋肉疲労たまってくる。
渓流の水を蹴りながら岩だらけの道を牙を出しながらヨロヨロと歩いた
途中で一服して腰にひもで巻き付けていた黄精の蜂蜜をゴクゴクと飲んだ。
それは喉に一つ一つの細胞にしみるほどの甘さだった。
これはうまいとは定番の満足した笑いが溢れた
今日は、ねぐらを探す暇はないなあ。
この渓谷で野宿だな、せめて熟睡できるほどの餌をかき集めなくてはならないがと渓谷のヤブを物色するように眺め回した。

何かを適当な食い物は無いのかと生唾をヒョイと出して当たりをキョロキョロと伺いながら顎を左右に動かした。
すでに泥だらけのシャツは擦り切れて黒い泥のシミと汗。
汚れた角質と汗の塊が膠のように凝縮して皮膚と一体となってコビリついていた。
全身はまるで野生の北京原人のような風貌だった。
誰が見てもまともな人間にとは見えない。
野獣のよつな劣悪な存在だった。
まだ2つの牙をもっ走り出したら止まらないイノシシの方がまともに見えるほどだった。
突然いきなりまだ昼下がりの日差し眩しい光が渓流の水を水晶のように反射させる水面にチラッと想像を絶するようなとんでもない顔がうつった。
アマゾンの熱帯雨林に生息する不気味な野獣を連想させるような容貌だった。
まだヒグマのほうがましである。
人食いゴリラと思われても仕方がないような顔つきである。
ハッカネズミようにナイフのように鋭い白犬歯が刃物のように鋭く尖っていた。
倫理観や知性、道徳的観念、哲学的思考を保有する人類とは想像もできない雰囲気だった。

私が飛騨高山の山岳地帯に魅力を感じたのはまずこの一帯が漢方薬が自生する有数な豊富な場所であったからだだった。
富山県は古くから置薬・配置薬のメッカであり日本でも有数の薬草の宝庫でもある。
この事実が探究心と好奇心をかきたてるのだ。
とくにこの地方では巨大な漢方薬シシウドが自生しているという噂を聞いたことがある。
そのシシウドの大きさは茎だけでもモウソウダケより円周が大きいものさえあるという。
どれほど大きいか計り知れないかそれか無限の好奇心をそそるのである。
できれば一部標本を採集し懸念品として捕獲しても悪くない。
この発想はまさにヤマアラシであった。
その日の夜は何事もなく過ぎた。
朝目覚めると太陽の強烈な光がすでに熱線になって新緑色の原生林を焦がしていた。
有機的な微生物の匂いと酸化した腐葉土の香りが熱板になってむせ返っていた。
透明な静寂の空気に金属的なクマゼミの慌ただしい合唱が途切れることはなかった。
恐ろしいほどの高温で許された短い夏を泣いている。

翌日も黎明の夜明けから炎熱の太陽の熱線が渓谷の谷間にさしてきた。
幻漢方薬・シシウドの探索と捕獲には絶好の天気である。
おそらくそれだけの霊薬であるから人を寄せつけない険しい渓谷の幽邃な奥に生息地があるに違いない。
山登りに必要な道具と服装で身支度を済ませワクワクしながら渓流の水を蓄えた浅い清流を水しぶきを上げて小走りで進んだ。
吐く息がイノシシのように荒く激しい。
巨大な植物の根茎を丸ごと掘る仕事はかなりの重労働てあったまして前肢打撲傷の後であるからなをさらである。
早速腰にぶら下げていた竹筒を出し中に入っているナルコユリの黄精エキスをゴクゴクと飲んだ。
これで少しは違うだろ。
できればもう少し瞬発力と耐久性がほしいのだが、それでも贅沢はいえない。
こうして薬草探索できるだけでもありがたいことである。
すてに裂傷の傷口も完全に塞いで新しい皮膚細胞が再生していた。
渓谷の渓流はかなり深く遠くまで続いていた。
途中で渓流は途絶し小高い丘になっていた。
丘の裏は雑木林で非常に深い森に包まれていた。
なにかないのかと必死で顎をジャクリ鼻水を飛ばしながら森の中に首をヒョイと首伸ばした。
かなり大型の高さ2メェトルに゙及ぶ巨大な植物が竹林のように置くまで続いているようだった。
何か飛んてもない物がありそうな予感を感じなからヤブに包まれた森の中に足を踏み入れた。

とその時だった。
なにか褐色の体毛に覆われた物体がモウソウダケよりおおきな草の根元に巨大な頭を突入させて鼻の先で泥をすくい上げてしきりに堀削してた。
体調2メェトル、体重300キログラムもあろうかというとてつもなくおおきなイノシシだった。
物音に近づいたのか小さな耳を震わせ聞き耳をたててこっちを敏速に振り向いた。
赤く充血し、ただれた目から固形の汚れた目ヤニ飛び出している。
太く短く湾曲に反り上がった牙の泥のついた先端から濃密な泥の混じったヨダレがダラリと池面に落ちていた。
その度に異臭が漂う。
周囲には大根ほどのおおきなクソが踏み潰されて散乱していた。
これは臭い、と喘いだ。
その近くからも大型のイノシシが頭部を必死で腐葉土の地面に頭部を挿入させてした顎で土砂をすくい上げて撒き散らしていた。
物凄い瞬発力だ。
とその時だった。
とてつもなく大きな肉の塊が突然虚空を描いた。200キログラムもえろうかという肉の塊が頭部を食いついていた。
顎が抜けるように互いに一匹のヘビを食うために必死で引っ張っていた。
みるとそれは猛毒のヤマカガシであった。
毒牙を出していたイノシシを噛んていたがイノシシは動ぜす、もがくヤマカガシの肉塊を必死でかじりその肉をえぐりながら食らいついてガミガミ食べていた。
恐るべき生命力だ。
地面にむしゃぶりついているイノシシは懸命に細長い紫色の山ミミズを口に加えてうまそうに食べている。
ミミズもヘビも大好物らしい。

だがそのうちの巨大な一頭か2メェトルほどの大きな草の根茎を掘り出して首を左右に振りながらこのか獲物は俺のものだといいたげに暴れ回っていた。

つづく

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