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マムシグサ中毒/地獄の門

マムシグサの中毒は予想をはるかに越えるものだったのだ。
吐血、腹痛、断続的な下痢それも血便と水様便が続いた。
そこから2週間の食欲不振、悪心、吐気、全身の倦怠感まるで地獄だった。
それから蘇ることがてきたのは薬草の生命力、液体免役であった。
キハダがそれだ。
キハダの猛烈な殺菌 鎮痛、消炎作用がなくては胃の修復は不可能であった。

マムシグサ

さすがに2週間食べないでいると全身的な倦怠感に襲われて栄養不良による脱力感でヨタヨタとなった。
まともなものは食えそうにないがそれても死ぬよりましだ。
なにかないかと当たりをハイエナなように物色しだした。
黄精エキスはきれていたからそれに変わるものはなかった。
このときほど死の現実を感じたことなかった。
それは何度も本能的に感じた。
マムシグサ中毒がそれだ。

このときほど生きることが仮想現実である実感を感じたことはなかった。
何度も悪夢であればと願ったものだ。
一粒の豆も逃すまいと腹ばいになり蛇のように体を左右にねじりなから移動した。
とその時だった。

何か皮を剥いた落花生のよつなうまそうな豆が三粒目前に転がっていた。
「ウヒャアッ」
これはすげえっと唸りながら舌を反射的に伸ばした。

手を移動させる時間を惜しむほど一瞬の早業で食いたかったのだ。
舌が過去を記憶しているらしくすでにその豆が口の中に入っているものと錯覚しヘレヘラと濃密な鼻水のようなよだれを垂れ流していた。
「これはすげえっ、これはうめえっ」
と激しいうめきを上げた。


ジャノヒゲの根についたマメ

だがそれに反して胃袋は反対の反応を表した。
まだそれは胃にはいつもていないぞ、勘違いするなまだ胃液さえでていなんだぞと険しく叫んだ。
だがたとえ錯覚であっても現実であれば文句はない。
量子力学的に時間と空間の法則を超えればないものも存在すると感じるようになるのだ。
だが地面に転がっていた落花生に似た豆はよくみればそれは錯覚ではなく勘違いだった。
たしかにそれは落花生にうりふたつであるが外皮が薄く白すぎるのだ。

何はともあれ食べて確かめるのが一番早い。
猛毒の根茎を恐れて慎重に恐る恐る少し噛んてみた。
驚くことにそれは食感があり落花生よりうまいほどだ。
「これはうめえっ」と唸った。

塩があると最高なのだが、酒のつまになるなあと関心するようにいった。
だがあいにく塩はない。
仕方なく豆だけを猛牛になってしこたま食べた。
「これはうめえっ」と再度あえぐ。

久しぶりこんいいものを食べたな、と笑いながら頭をヒョイと左右に振った、どうもこれが曲になつているらしい。
自分で言うのも何だが世界的な大スタアマイケル・ジャクソンにそっくりだった。
これだとハリウッドでも通用しそうだ。
自画自賛しながら喜んだ「ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒっ、グオオオオオッグリャアッ」
よし少し腹が膨れたなあと満足した笑いをさうかべて当たりを見回した。

一難が襲ってくればさらに新しい難局が到来する。
それが未知の薬草探索の現実であった。

久方ぶりに渓谷の野宿から洞窟に帰った。
原始的な空間であるが住み慣れてくるとここが故郷になるのだ。
だが油断はできない。
猛毒のサソリはいないがいつ猛毒のマムシやヤマカガシが岩の隙間から鎌首をもたげてくるか見当がつかない場所であった。
蛇は真夏の熱さを恐れて涼しい冷えた穴蔵に避難することもある。
要所を確認したがって穴の中に姿を隠していた。
いるかどうかをを竹でつついて探って見たが物音はなかった。
三箇所ほど怪しいつすぐらい穴がスッポリ空いているところがあったが特異的な斑紋をもつ粘液質のマムシは姿がない。

その日の夜の夕食はイノシシの食物捕獲活動で偶然学習した雑草ユリ科のジャノヒゲの髭根に無數にぶら下がっている落花生大の豆を煮て潰して重湯にした画期的な薬膳料理であった。
効能は肺の疾患 ぜんそくやさ気管支炎、去痰、肺結核、肺炎などの呼吸器疾患の薬だ。
別に特別な重労働をしたわけではないが妙に睡魔が襲ってきた。慢性疲労だろうか、ジヤノヒゲには滋養強壮作用があることを思い出して木綿の袋に入った泥に汚れた豆をとりたして10粒ほどを口に放りこんだ。
ガミガミと鋭く険しい犬歯で噛んで食べた唾液に練り混ぜていきなりヒョッいと飲み込んだ。
野生品にしては非常にうまい。
ビールがあると最高である。
何しろ獰猛なイノシシが懸命に食べるぐらいだから不味くはない。
ひょっとすればイノシシはこれを常食しているから全身の筋肉がコブ状に隆起している可能性がある。
イノシシのあの一直線の猛烈な瞬発力は落花生の力ではないのか?
おそらくそれだと確信しし今度は落花生を胃袋が割れるほど食べた。
すると今度は何を勘違いしたのが胃の皮が爆発的に膨れ上がってきたのだ。
まあ今日はこれぐらいでいいだろうと感じて残りの分は明日の楽しみに保存した。

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