滅亡を呼ぶ恐怖の酸性雨
前文
1950年代から世界各地、特に先進国工業地域や大都市を中心に降りだしてきた強烈な酸性雨の存在は
海洋汚染と共に人類滅亡の序曲として貴重な地衣類や、森林、草原、湖水、河川、海洋、動物、
微生物、人類に深刻な問題を投げかけている。
原因は300年前のイギリスの産業革命を起点とした石油、石炭などの鉱物原料の燃焼、工業製品、
日常品などの製造による廃液、廃棄ガスによる硫黄酸化物、窒素酸化物であった。
むろん自然の場合でも酸性雨は大気中の硫酸、硫酸塩、硝酸塩などの物質で生成され雨に溶けて
地上に降り注ぐ。
しかし近年の猛烈な工業生産による硫黄酸化物、窒素化合物の無差別的な放出が世界規模で激増し、
国際基準であるPH5、または6の基準をはるかに越えたPH4、PH3などの高濃度酸性雨が世界各地で
観測されている。
この強烈な酸性雨の影響により世界各地で森林が大規模に枯渇したり、地衣類のある種の絶滅や湖水中の植物プランクトンの死滅による生態系の分断により、サケ、マスなどの魚類が大量に全面的に消滅するという異変が続発しているのだ。
日本では1960年代に産業地帯である四日市周辺や、近畿地方などでアサガオの脱いろ現象が観察され、人に対しても四日市喘息という大規模な公害が発生させる原因となった。
現在日本をはじめとして欧米、米国、カナダなどの森林、湖水が酸性雨で汚染されその地域に生息する動物、植物、人間に対して驚異を与えているのだ。
しかもその雨には有毒な重金属である鉛、亜鉛、市場最強の発ガン物資といわれるダイオキシン、
農薬のΗΒС、DDΤなどの殺虫剤が雨になって降り注ぐのだ。
しかもこれらの化学物質、重金属の複合毒性については何ら研究もされていないのが実情だ。
酸性雨とは
この章に入る前に酸性雨について説明したい。
水中に含まれている水素イオン濃度PHと呼んでいる。
生体のオレオシスタスとして重要なPHは7.2から7.45の水素イオン濃度で推移している。この濃度を弱アルカリ性と呼んでいる。
つまり水に含まれる水素イオン濃度の差により低い方が酸性、高い方がアルカリ性である。
PHは0から14まであり、7が中性、それ以下が酸性、7以上の水素イオン濃度がアルカリ性であった。
いかなる有機物も含まない純粋、または蒸留水はPH7の中性に位置している。
このPHは対数で表され、PH1の違いは10倍の差がある。
これは非常に重要な数値である。例えばPH4とPH5の違いはPH4がPH5に対して10倍の酸性度があるということだ。
PH3の雨とPH5の雨は
PH3の雨がPH5の雨に比べて100倍の酸性度があるということである。
このような高濃度水素イオンの酸性雨な自然の状態で発生することはないが、しかし欧米、カナダ、北米ではしばしば猛烈な酸性が都市部や森林地帯、湖水に降り注ぐのだ。
日本の土壌はPH5または6の弱酸性で、これは日本は火山列島で大部分が火山岩、火山灰などの土壌、
岩石で形成されている。
しかも日本列島そのものが日本海と大平洋に面した険しい山岳地帯で生成された孤島であった。
切り立った断崖のような島であるから、岩石や土壌に溶けたカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ性の鉱物元素が雨、風雪などにより山から海に流出したためにいっそう日本の土壌は酸性土壌となっている。
このためにホウレンソウや酸性に弱い野菜は、種子の発芽の際に石灰を散布しなければ種子発芽障害、葉の黄変、根茎の成長障害などにより枯死することがある。
大気中には二酸化炭素、炭酸ガスといわれる物質が0.03%の割合で含まれる。
この元素が雨に溶けて地球上の表面に降る雨のPHは、5.65である。
これは自然の雨や霧似含まれる水素イオン濃度でこれ以上の低下を国際的な基準として酸性雨と定義している。
しかし近年爆発的な工業廃棄物、自動車の廃棄ガス、讒火力発電所、焼却施設などから放出される窒素酸化物や、硫黄酸化物の大気中の放出量は想像を絶するものがある。
膨大なこれらの産業生成物が、雨に溶けて降りだすのだ。
これらの酸性度は国際基準のPH5.65をはるかに越えるものとなる。
むろん、これらの酸性雨に混じって、地域、環境、時代によって、多様な化学物質や重金属などが地球上に毒のシャワーとして降り注ぐのだ。
イギリスの産業革命当時の石油化学コンビナート、火力発電所などからイオウ分を取り除く脱硫装置がない時代には、高濃度のイオウ酸化物や窒素酸化物が放出され、大気汚染を激増していった思われる。
特にその頃は現代と違って火力発電所、重油や石炭をエネルギー源としていたものが中心であったが、酸性雨にはイオウ分が多く含まれていた。
しかし、ガソリンを燃料とした車が猛烈な加速度で増加した現代では、硫黄酸化物よりもガソリン車からから排泄されている廃棄ガスに含まれる窒素酸化物が相対的に多くなっている。
放出されたこれらの物質は大気中に拡散し、化学反応を受けるのだ。
例えば工場から放出される二酸化硫黄、СΟ2は二三日間大気中を浮遊した後、無水硫酸、硫酸、亜硝酸などに変化し、雨に含まれる。
文:中村臣市郎
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