生命力の探求 第4章 23 「植物の逆襲」
こうした補食動物や病原性微生物に対して、植物の中枢、遺伝子レベルである種の変化が起きた。
生物進化の原動力である神の手である能動的リボザイムが生存の危機に刺激されその意識の目が覚醒したのだ。
今まで補食生物に対して完全な無力、無防備、無抵抗であった植物が天敵に対して蜂起したのだ。
それは生命の知性といってもいい。
昆虫や動物という天敵を排除するために、根茎から吸収する元素や現状の有機物、アミノ酸、糖類、脂肪酸などを使って複雑で有効な有機化合物を作りだしたのだ。
おそらくこれは植物の歴史で革命的な進化であった。
植物は宿敵の生命体の構造、機能、そして代謝を分析し、解析し、その結果動物と昆虫は中枢神経という系統で呼吸し生存のエネルギーを得ていることがわかった。
植物に向かって補食するために獰猛に襲撃して食い荒らす生物に、運動という的確敏速な移動機能をもつそれらが以外に致命的にもろい生物であることがわかった。
その中で動物と昆虫の中枢神経を阻害させる有毒な化学物質を製造するものが現れたのだ。
それが有害、有毒植物であった。
その最強のものがキンポウゲ科のトリカブトである。
トリカブトはその生体の全体に猛毒のアルカロイド、アコニチンという液体を液胞に含ませそれを補食する動物や昆虫の神経を麻痺させ、量によってはどんな巨大強力な猛獣でも一撃で倒すことができた。
トリカブトは昆虫や動物が神経で生きることを知り、神経毒を合成して自己の生命体を守ったのである。
ごく微量でも中毒の苦痛を経験した生物はそれを学習し本能的に猛毒のトリカブトを避けるようになる。
このような生命の時刻表保身的な力学的進化はDNAでははなく、新しい機能と物質を創造する能動的リボザイムであった。
石炭紀、陸上で繁栄したソテツ科のソテツはかっては1000種前後自生していたが、現在ではモルカソテツなど9種前後に撃滅している。
おそらくこれは絶滅したソテツの種が有効な武器である猛毒の化学薬液の製造をできず生物の補食で死滅したと考えられる。
生命力の探求 24 「植物の英知と逆襲」
生命力それは存在の持続の性質を保とうとする力のことであった。
生物学ではこれを自己保存、本能と呼んでいるがこれには人類の知性と科学を超越した意味がある。
ソテツは亜熱帯、熱帯地方に分布し、日本でな九州宮崎県以南から沖縄諸島に普通に見られるものである。
このソテツも全株が有毒であり特に茎と種子に配糖体サイカシンが濃縮されている。
サイカシンはトリカブトのような猛烈な急性毒性はないが、慢性的に摂取すれば強烈な発ガン性と回復不能な神経毒が含まれる。
その本体が配糖体サイカシンだ。
このような毒のために容易に昆虫や草食動物はソテツを補食しない。
これほどの有効な攻撃的な武器はない。
つまり植物は動物のように高度な視覚器官、触覚、嗅覚、聴覚などの感覚受容体、その刺激を統合し解析する脳がない。それどころか脳の指令で動く筋肉組織、手足がないのだ。
これまでの生物学の理論ははここまでである。
これから先は生命哲学の領域である。
植物の原子感覚は霊長類の人類が判断を下すほど下等でも単純でもない。
むしろその逆であった。
植物は動物が動く地中の振動や、体温、昆虫や動物の固有の電磁波、つまり特定の周波数を感知し解析し認知するのだ。
恐るべき高度な感覚と認識能力だ。
動物の補食活動の接近情報は、細胞の脳である分子脳、リボザイムに伝達され、リボザイムは危害を加える昆虫の機能と構造、代謝システムを解析し、それに致命的な弱点を発見し、それに有効なある種の化学物質の製造にとりかかる。
それは炭素、水素、酸素、窒素、などの元素を選択し複雑な高分子を繋ぎ合わせて複雑で高度な分子活性構造体を作る。
つまりこれを作るには高度な物理学、電磁学、医学、生理学、分子生物学、化学の知見が無くては
その製造は不可能である。
人類の知性や能力などは比較にならないほどの科学的な高度な知性をもつのである。
文:中村臣市郎
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