ガンのない国フンザ王国
世界規模で近代医学で不治のガンが猛威をふるっている。
ガンに関しては各大学機関、研究機関ぼ医学者、生物学者の懸命な研究にもましてガン細胞はそれをあざ笑うかのよに発生し人類の膨大な人生と命を無常に奪っていた。
恐るべき疾患である。
だがそんな状況でガンがほとんどない国があった。
それが海抜5000メェトルの険しいヒマラヤ山脈に面したフンザという小国である。
そこには不老長寿に近い100歳を超える老人達がゴロゴロ暮らしているという伝説的な噂があったのだ。
そしてそこではガンが存在しないというのだ。
覚悟はしていたがそれは想像を絶する過酷な環境だった。
海抜5000メェトルである。
酸素が半分しかないところであるから高山病が多発する世界だ。
生と死の境界であった。
命からがら彼等はやっとそこに辿り着いた。
予想通りそこには痩せた骨太いのフンザ人が岩とレンガで組でヤギの糞でかためた原始的な家に住んでいたのだ。
村民は好意的に研究団を迎えてくれた。
まず一行が驚愕したのはフンザ人の骨格であった。
骨は鉄筋のように太く硬く強靭であった。
しかもその骨に岩のような筋肉が全身的に隆起していた。
100歳を超える白髪の長老でさえボディビルダーのように筋肉隆々である。
村の一番の長老の年齢は160歳を超えていた。
学者達はそれに驚いたのである。
信じられない話だがその長老が石の家の側面に置いてあった2つの大きな岩を指さしてそれを持ち上げるという手招きをしたのだ。
どう考えてもを200キログラムを超えるほどの岩であった、それを160歳の老人が一人でかかえ上げるというのだ。
村民がやがて見物人として押し寄せる。
ちょっとした見せ物である。
フンザ人は互いに笑いながら長老の行動を沈黙して黙示していた。
長老は直立不動の姿で数度深呼吸し精神を統合させるかのようにシワだけの目をつぶりやがて大きく息をし岩に両手で掴んでいつ気に叫びを上げて持ち上げた。
つべっ、群衆から奇声が上がる。
200キログラムの大岩を老人が頭の白髪の上まで持ち上げたのだ。
学者達はこれには度肝をぬがれほど驚いた。
「ウエッ、すすごい」
それはほとんど信じれられない現象である。
ギリシャ神話に出てくるヘラクレスのような剛腕の持ち主である。
老人は呼吸も乱さず持ち上げておろした強大な岩を笑いながめていた。
恐るべき力だ。
それにしてもフンザの小さな村を囲むよう何かが芽吹いていた。
「あれはなんですか」
とクレブス博士は長老に訪ねた。
「あれかね。あれはのう村の私等の大切な食物だよ」
と化石のような口元をひょいと歪めて笑った。
夕食の支度をしてくれているのだろうか、比較的若い女性達が石窯の周囲に食物らしき物体を配列しだしていた。
それは文明の店頭で市販されている野菜とは異なるものだった。
「何だあれは?」
と若い栄養学者がいった。
それはなにか巨大な木の根茎のように硬そうで太く肥大していた。
どう考えても食べれる物とは思えない。
「あれかね、主食に混ぜるキャッサバだよ」
と白髪の筋肉隆々の長老が鼻毛をむしりながら笑った。
すると数人の女性が手際良く動いてその泥のついた根茎をとり陶器製のツボのようなものを出して手製のナイフで根茎の肉質をカツオブシのように削りだしたのだ。
それは白く以外に柔らかく粒子の荒い物で少し粘り気のある物体であるクレブス博士はそれを一心に見つめていた。
「何だあれは?」
と若い学者が不思議そうに声をだした。
「あれかね、これはキャッサバというものだよ。うまいぞ」
と口を吊り上げて笑った。
キャッサバに少し水を加えて付き潰すと何かスモモのような果実を袋から取り出して、それをキャッサバの上に置いて細長いすりこぎのようなもので潰しだしたのだ。
一団は未知の食物の料理を固唾を飲んで見守った。
別な女性が小さな石窯の中に細い枯れ木に火をつけて釜の上に泥状の白いものを貼り付けて焼き出した。
香ばしい匂いがたちこめる。
「なんですかこれは?」
とクレブス博士が首を伸ばす。
「主食だよ」
と長老は歯をむき出して笑った。
「パンのようなものじゃないか」
と学者の一人が言った。
「そうかもしれんな」
と生理学者の中年の男性が首をひねっていった。
しばらくすると焼き上がったのか女性が老木の木を輪切りしたような木質と盆に焼きたてのパンらしきものを差し出した。
「ほう、うまそうな匂いだ」
とガンの臨床学者がいった。
それにしてもを石窯の周辺に並んでいるものは野生のイチゴ、木の実、得体のしれない何かの木の樹皮のようなものもあるのだがその中でもひときわ大型の木の肥大した紡錘形の根茎が目立つ。
「なんだねこれは?」
と薬学者が首を伸ばしていった。
「これはのう、先祖代々から受け継がれてきた薬草じゃ」
と長老が笑いながらいった。
「薬草ですか」
「そうじゃ、この辺りの草原にいくらでもある」
「うむ、断定出来ないがこれは漢方薬の大黄の根茎に似ているような気がする」
と薬学者が思い出すようにいった。
とその時、横からヘソまで顎髭を伸ばし中老が首を伸ばして言った。
女性たちは手際よく平石の上に焼けた物体を乗せて学者グループに勧める。
何だこりゃあ?うむ、これはうむ。
見開いて頭をかしげた。
「うむこれは以外にうまいぞ」
と生物学者が驚くようにいった。
「初めて食べる味」
とガンの臨床医が言った。
だが少し特異的な酸味と辛味があった。
主なもの杏の種子が多目に入っておると長老が満足そうにいった。
「杏の種ですか?」
と驚くように若い薬学者が唸った。
そこで若い生理学者が何かニヤニヤしながらリュックからカップ麺を取り出し長老の口の前に差し出した。
それは即席の加工食品だった。
長老はそれを物珍しそうに眺めてハナクソをほじくりだした。
それは1円玉のように大きいものだった。
「さあ客人せっかくだから腹いっぱいたべるがいいぞお」
と長老が学者達にパンを勧めた。
しかしだよ私は様々な民族の食生活を研究しているがアンズの種を主食にしている種族は初めて見た。
「いいかこれはな、フンザ人の大切な主食だ。
昔からこの食べ物は変わっておらん」
と鼻の穴付近までたれた白髪の前髪を手でかきながら言った。
その会話の中でクレブス博士だけは聞き漏らすまいと真剣だった。
杏はビタミンB17がかなり含まれているから注意したほうがいいのだがと薬学者がいった。
ビタミンB17ですか?と副村長が首を伸ばした。
だが原始的な生活で教育を受けた形跡もないフンザ人が杏に含まれるビタミンB17という栄養素を知っていることが驚異であった。
彼等は一週間フンザに滞在し3日目に2万人のフンザ人の厳密な健康診断を行った。
何しろ2万人である。
完全に終わるまでには4日間を要した。
だが膨大なカルテに目をとおすたびに学者達信じられないという顔つきで互いに驚いた。
血管の造影までしてみたが、誰一人動脈硬化が発見されなかったのだ。
特に驚くは160歳の長老であった。
彼の血管内腔と弾力性は10代の少年の血管だったのだ。
こんなことは見たことがない2万人のフンザ人の血管年齢はすべて医学の常識では考えれれない数値であった。
「どう考えても長老の血管年齢は10代のものだよ」
と循環器専門の医学者が唸った。
あり得ない。
3日目は彼等にガンがあるかどうかの検査が行われた。
触診から画像検査まで執拗に行われた。
どう考えても狐に騙されたようだ。
ガンがほとんど見当たらないとガンの臨床医が盛んに首をひねる。
「医学の常識ではあり得ない」
とクレブズ博士がため息をつく。
こんな経験はしたことがないと若い人類学者が頭をさかんにかしげた。
「おそらくこのフンザ人のガン検診の報告書を大学に持って行っても誰も信じないだろうな」
と若いガンの臨床医が言った。
当然だろうね。
誤診だと決めつけてもう一度やりなおせと言うだろうな。
クレブス博士は彼等の会話を聞きながら別なことを考えていた。
それは彼等にガンが存在しないのは彼等の食系生活にあるのだろう。
しかも主食が杏の種で杏の種は杏仁といわれる漢方薬であった。
主に急慢性気管支炎や喘息に処方される薬物である。
有効成分は信じがたいが猛毒の青酸配糖体アミグダリンである。
青酸の薬理作用は呼吸中枢に作用し、気管支を拡張させ咳を鎮める働きがある。
青酸は猛毒ではあるが適切な量では薬物として作用するのだ。
時には論文調では無くこんな体験小説風でもいいですね。時々入れますかね。
その夜中、辺りは暗黒の闇と静寂だけが支配していた。
クレブス博士はなかなか寝つかれなかった。
何しろ2万人の健康診断で1人でさえガンが発見されなかったからだ。
そのことに対する衝撃で脳が覚醒したのである。
何故フンザ人にはガンや動脈硬化、慢性病、アレルギー疾患がないのか恐るべきその疑問であった。
近代医学であり得ない現象を目撃したのである。
この原因を解明すればガンの治療法が見つかるかもしれない。
主食は杏の種、杏仁であった。
それには高濃度のビタミンB17、アミグダリンが含まれている。
これは推測であるがおそらく杏仁のアミグダリンがガンの発生、増殖を抑制しているではないかという疑問である。
そうでなければ2万人に1人もガンが存在しないことはあり得ない。
こうしてクレブス博士はフンザ人にガンがないのは杏を主食として多量のアミグダリンを摂取していからだと結論したのである。
フンザ人の食生活には近大文明の化学薬液である汚染された加工食品はほとんどない。
彼等は自然の環境で自然に生育したものを収穫し自然に食べている。
あるがままの食物をあるがままに自然に食べていいるのだ。
これが自然の生き方である。
そして杏の中に含まれる多量の自然のビタミン、ミネラル特にビタミンB17、アミグダリンを近大文明人の200倍ほど多量に食べていたのだ。
ガン抑制はこうした自然食にあると言っても良いだろう。
だがクレブス博士はここまで到達しながら彼等にガンがないのはアミグダリンを多量に摂取していることにあると結論してしまったのだ。
この意味でガンとは自然のビタミン・アミグダリンが欠乏した時に起こる。
慢性代謝病だと断定したのである。
それもあるが彼等にガンが存在しないのは自然の食物を自然に食べていることにある。
ここでは即席ラーメンなどは存在しない。
もう1度フンザ人の食生活を見てみると自然農法で生育した杏が主食でありその他に穀物である。
ヒエ、キビ、ソバアワが主食であり、ビタミンミネラルのみ多い野生のムラサキウマゴヤシ、野イチゴ、豆類のインゲン、エンドウ、そらまめ、カブラ、キャッサバ、野草、薬草そして漢方薬が副食なのだ。
フンザ人はあまり肉を取らないから動物性タンパク質は植物性タンパク質の豊富な豆類がら摂取していた。
ここに動物実験でフンザ食の報告がある。
マウス数千匹に植物性の穀物、野菜を食べさせた。
数匹は死亡したがその他のネズミは老化現象も表れず自然死は発見されず、幼児ネズミも死亡はなかった。
病理解剖では不自然な痕跡はなく病気とはほとんど無縁であった。
フンザ食がいかにすぐれた健康と長寿食かこれで理解できそうだ。
近代医学や栄養学、生物学が懸命に100年間膨大な時間と経費を浪費して研究してきた健康と長寿の原因がただ自然に生育したものを自然に食べるというたったそれだけのことだったのだ
かわりに外国の食の動物実験がある。
インド食とパキスタン食を千匹のマウスに飼料として食べさせると、病気が多発発生し眼病、脊髄湾曲、皮膚病、神経障害、脱毛、心臓衰弱、腺病質、胃腸障害が続発した。
イギリス下層階級食の白マーガリン・甘味料つき紅茶・カンヅメ・ジャムゼリーこれらはアメリカ、近代の日本食である。
ネズミは神経質となり16日目に仲間のネズミを食い殺しだした。
これは動物が栄養が欠乏したときに見られる衝動的な行動である。
フンザ食をもう一度点検してみよう。
動物性タンパク質はほとんどとらず豆類などの植物性タンパク質をとり、野イチゴ、杏、リンゴなどの果物類、緑色黄色野菜、木の実、野生の野草、木の樹皮、根茎、そして究極は漢方薬であった。
食の違いが一方では想像を絶する長寿と健康を育て、一方では慢性代謝病やガン皮膚病などに侵されて短命に終わるのだ。
マクガバン報告書
同じタンパク質でも動物性タンパク質はあらゆる病気を発生させ、ガンを始めとした病気に侵される。だが一方植物性タンパク質はガンの発生と増殖を反対に抑制させ病気を予防するものとなるのだ。
これがこの膨大な歴史的に史上最大の臨床医学、疫学の結論であった。
低タンパク質の食事は、猛毒の発ガン剤アフラトキシンをどれだけネズミに投与したにもかかわらず発ガン物質によるガンの発症を予防した。
ガンの発症があったとしても低タンパクの食事はガンの増殖を強力に阻止した。
動物性タンパク質による投与の臨床では、動物性タンパク質の摂取はガンの発生と増殖が16倍に達した。
特に牛乳のカゼインは牛乳タンパク質の87%を構成しているがそれはガンの増殖を16倍増加させた。
また大量に投与してもガンの発症と増殖を促進しないタンパク質がある。
それが植物性のタンパク質である。
史上最大の疫学調査と臨床医学的研究。マクガバン報告書チャイナプロゼクト。
動物性食品を食べた人は最も多く慢性の病気を起こし、またごく少量であっても有害な影響を及ぼした。
進化の法則
自然の生物生態系の調節
動物性食物がどうしてガンや慢性病を起こすのかこれについては色々説があるが生物学的に言えば人類は元々草食動物として進化してきた。
それがある時期に突然肉を食い出したのだ。
人類の草食動物としての進化は様々な臓器・器官・形態で観察できるがまずその唾液が穀物や植物の硬い繊維質を消化させるために唾液がアルカリ性であるということだ。
消化酵素ジェスターゼが合成されたのもそれである。
だが反対に肉食動物は動物性たんぱく質を消化させるために唾液は酸性である。
これは動物が進化に適応していくための一種の機能である。
動物性タンパク質の最大の欠陥はタンパク質を低分子させるために消化酵素で分解するのだがその分解代謝の過程で有害発ガン物質が生成されるということだ。
タンパク質は最終的にアミノ酸からアミンに分解されるがこのアミンも細胞変異を起こす発ガン物質であった。
それだけでなくを様々な有害発ガン物質が肉を消化される過程で副産物として腸管で生成され腸内環境と血液が汚染されることになる。
インドール、スケトオール、トリプトファン、硫化水素、アンモニアなどがそれだ。
これらは細胞毒であり腸管の外皮細胞を攻撃し絨毛の栄養吸収受容体に侵入し健全な赤血球の合成を阻害せせることになる。
これらの有害汚濁物質が血液の血清成分を酸性化し沼地の泥のようになる。
これが肉食の最大の最悪の欠陥であった。
肉食動物はこれらの動物性タンパク質の発ガン有毒物質を進化の過程で分解または中和できる酵素や機能を獲得したと推定できる。
人類は草食動物として進化しておりこれら分解酵素や中和する機能の獲得は必要ではなかったといえるのだ。
それともう一つ自然には重大な種の秩序と共存調和の法則がある。
それは単一な種が爆発的に増殖すれば全体の生態系が破壊されるということだ。
そこで自然は単独種の爆発的な増殖賀起きないようにある抑制のブレーキをかけたのだ。
人類は食物連鎖の頂点にありこの霊長類だけが猛烈に爆発的に増殖するすれば全体の生物生態系が破壊されることになる。
肉がもつ発ガン性、多種な有害物質の生成はこうし観点から考えることも重要である。
「先生、私もあれからずっっと考えていたのですがフンザ人にガンがないのは膵臓に秘密があるのでないですかね」
と若い生理学者が言った。
「膵臓かね、タンパク質分解酵素だね」
とクレブス博士がいった。
ご存知のようにガン細胞の細胞膜の電荷ですがマイナスですね。
リンパ球やマクロファジーも実はガンの細胞膜と同じマイナスですね。
マイナスとマイナスは電磁学的に互いに反発して免役細胞はガン細胞を攻撃しょうとしても接近できない。
そいうわけでガンはこんな電磁学的原因で免疫から逃れてきた。
この電磁的要因がなければガンは免疫で攻撃できるのですがと生理学者は言った。
「君は確か大学の論文で胎生学を専門に研究していたはずだが」
とクレブス博士がいった。
「そうですね、ガンの原因究明するにはそこまで遡らなくてはならないと思いまして」
胎生学は進化の過程が見られるからね。
「私も若いときは興味を持つ少しの本を読んだことがある」
とクレブス博士は笑いながらいった。
それにしても先生健康診断の血管画像検査の件ですが循環器専門の学者が訪ねた。
「何だね」
フンザ人の血管ですが彼等には動脈硬化ないですね。
160歳の村一番の長老ですよ。
1000歳を超えるとほぼ確実に血管が8割詰まっているのが普通ですが長老の血管は誰が見ても10代のものですよ。
ほとんど綺麗でその形跡が発見されませんね。
不思議です若い心臓専門の医師は首をかしげならいった。
不思議というより狐に騙された感じだ。
医学の常識ではあり得ない。
「君はどう思う?」
とクレブス博士が生物学者に問いかける。
「これは私の推察ですが血管に動脈硬化が見られないのはフンザの食生活にあるのではないかと思いますね。
基本的には彼等は肉食ではないこと、ある意味で雑食ですが極めて繊維質の多い根もの野菜、緑・基本的には緑黄色野菜、果物類、野草を食べてますね。
まさに草食です」
と生物学者は少し笑いながらいった。
野生動物の臨床解剖をしたのですがシカとかシマウマ、ヤギなどの野生の草食動物の血管は肉食動物と比べて血管内宮が広く動脈硬化になっていませんね。
脂肪やコレステロールの蓄積がないのです。
それと同じ現象ですかね。と生物学者は断言するようにいった。
「私もそう思う」とクレブス博士が言葉を挟む。
2日後であった夜中から表でしきりに若いフンザの人の女性の声で目が覚めた。
広場にある石窯の周辺に30名ほどの現地の女性がフンザ語で言葉をかわして慌ただしくいたのだ。
25名のフンザ調査団はその声で目が覚めたのかしきりに寝返りをうっている。
一人のスタッフが起きて入り口に立って物音のする方向を眺めている。
どうやらその騒ぎが朝食の準備のようであった。
何しろ健康調査団だけでも25名である村民を合わせればおそらく数100名の朝食を用意しなくてはならない。
大変な仕事である。
だが女性達は嫌がりもせずそれが与えられた使命のようにてきぱきと動いた。
朝食の準備ができたのかフンザ人の男性が広場に来るようにいった。
昨夜の夕食があまりにも早かったせいかかなり空腹であった。
広場の石窯の火からたちこめる蒸気の匂いが食欲をそそってきた。
時間になると釜の周辺に村民が集まり女性が鉄釜の液体をスープ盆に乗せて来るのを待っていた。
いやにいい匂いだなと、栄養学者がいった。
「何か分からないがこんな匂いははじめてだな」
と臨床検査技師が言った。
クレプス博士は泥製の器に入った朝食の中身に興味があった。
「朝から彼等は何を食べているのか?」
「これはなんだ?」
と生物学者が老木の幹を輪切りにした盆の置かれ複数の木製の器を物珍しいそうに凝視していた。
何だこれは何かのお粥のようだな、と誰かがいった。
「これはなんですか?」
と若い栄養学者が長老に訪ねた。
「これかね、これはのう俺等の大好物な朝食たぞ、口に合うかどうかわからんが食べてみるとよい」
とお粥のよう白い液体を器に口をつけてひょいとすすりながら笑った。
味はほとんど岩塩である。
これに正体不明のすりつぶした白い粒状ものが浮いていた。
クレブス博士はそれを恐る恐る口に含んで飲んだ。
「これは不味いものではない、なかなかうまいぞ」
と笑った、だがその笑いはどことなくぎこちがない。
目尻の筋肉が萎縮して釣り上がりピクヒクケイレンを起こしていたのだ。
他の学者達も一応に表情が硬く不自然であった。
あまり口に合わなようだのうと長老がいきなりゲラゲラ笑いだした。
中身じゃかと中老が喉仏を鳴らしながらいった。
「杏の実の塩漬けにキャッサバをすりおろして煮込んだものじゃ、どうじゃうまかろう」
と笑った。
キャッサバと杏の塩漬かと栄養学者が感心するように唸った。
このお粥に浮いている青い葉はなんですかと誰かが長老のオジロワシのような精悍な容貌を見ながらいつた。
「これかこれはのう大麦の若葉を入れておる、これが免疫を高めるのじゃ」
なるほど栄養学者は自分の領域に入ったのか何か獲得するようにうなずいた。
「先生これは道理にあってますね」
と栄養学者がクレブス博士を見ながらいった。
大麦のイネ科の中にはドウリンという青酸系統の成分が含まれております。
「アミグダリンと同じ仲間かね」
そうですね。
基本的には彼らはこんな形で多量のアミグダリンを摂取していたのですね。
血液検査でもフンザの人達が文明人より200倍ほどビタミンB17を食べていることがわかますね
「どれぐらい杏の種を食べているのですか」
栄養学者は長老に尋ねる。
「一定していないが食べる人は1日で種を100ほど食べるだろうな。
私も多い時で1日200個ほど食べたことがある」
と長老は口元を歪めて笑った。
だがこの言葉に驚いたのが毒物専門の薬学者であった信じられないといった表情で少し青ざめていた。本質的にいえば杏仁は猛毒ですよ、シアン化合物と猛毒のペンズアルデヒドの化合物ですから2種が同時に作用すれば単独の100倍の相乗毒性が発生しますね。
「今まで杏を食べて中毒した人はいませんか」
薬学者は長老に訪ねた。
「そんな話は一度も聞いたこたことがない」
俺等は杏の種を何万年も食べてきたからのう。
3日目の夜であった。
「先生長老いった話ですが200個ほど杏仁を食べたことがあると言っていましたが良くもそれで中毒して死にませんね。
それが不思議ですよ。
杏仁の毒性実験の報告では成人の致死量が50から60個ですよ。
200個だと完全に人の致死量を超えていますよ。
それでどうにもならないということが信じられません。
薬学者は驚くようにいった。
毒性学ではあり得ない」
先生これはどう言うことですかね。
栄養学者がクレブス博士の顔をのぞきこむ。
その原因については私も正確にはわからんがおそらく推測ではフンザ人の体に青酸の毒をある程度緩和せせる代謝のシステムが進化の過程で獲得されてたのかもしれん。
それは青酸を分解する保護酵素の量がフンザ人は多いのかもしれない。
それについては一つあるのですが、と薬学者がいった。
他の詳しいフンザ人にて聞いたのですがフンザでは長年杏の栽培をしていて極端に苦いもの渋いものは捨てて口当たりのよい種を選択してきたといいます。
おそらくそれが青酸の毒性弱める結果になったのかもしれませんね。
原因はその両方だろうね。
とクレブス博士はいった。
先生昨夜の続きですがと薬学者がきりだした。
胎生学ではガン細胞は現代医学が認識するような細胞の変性や変質、遺伝子変異起こした細胞ではなくガン細胞そのものだと言うことですね。
胎児細胞そのものがガンなんです。
それは少なくとも生物学的に受精卵がたった10ヶ月でたった1個の細胞から50兆個の細胞にしなくては人間の子供は生まれてこないという法則がありますね。
そこでその細胞数を達成するにはある限定された期間に猛烈に細胞分裂しないと新生児は生まれてきません。
妊娠初期3ヶ月は細胞をとにかく増やす期間です。
それでその期間胎児はガン細胞になるのです。
その証拠に妊娠を判別する精線刺激ホルモンを胎児細胞は出してますねこれはガンにしか出さないホルモンです。
そうだね。
ガンの臨床医が考えていたのが感細胞膜と免疫細胞の間の電磁学的な反発の問題であった。
これに関してはクレブス博士の意見はどうだだっのか?
彼もまたそれに腐心していたガン細胞は免疫が攻撃が不可能な保護膜により守れてきたのだ。
保護膜を攻撃し破壊させるのがアミグダリンビタミンB17であった。
特にベンゾアルデヒドは細胞毒であり、ガン細胞の保護膜を破壊させる働きがある。
ビタミンB17の威力はそこにある。
それと同時にガン細胞の保護膜を破壊させるのが膵臓から分泌それるタンパク質分解酵素トリプシンである。
あるいはキモトリプシンである。
妊娠初期3ヶ月の胎児細胞はガンそのものであり無差別的に猛烈に分裂し拡大写真転移していくのだ。これは悪性のガンそのものである。
だがその時期を過ぎると不細胞分裂は嘘のように停止し有機的に緩やかになる細胞分裂に歯止めをかけてたのは膵臓から放出されるタンパク質分解酵素トリプシンであった。
これらの分解酵素がガン細胞を殺して行くのである。
翌日の夜であった。
ヒマラヤの日没は早い。
しかも冬を控えているせいか朝晩がかなり冷える。
何しろ真冬は気温がマイナス40度を超える厳冬である。
5000mの酸素が希薄な過酷な山岳地帯であった。
いつ頃からフンザ人がここに住みだしたか不明だが驚くのは100歳、200歳の老人がゴロゴロ生息し若々しく元気で過ごしていることだ。
しかも見たところ食事は非常に質素で素朴でこれでよく生きられるなと思えるほど豊かなものではない。
猛毒の青酸カリを含む杏の種杏仁が主食であった。
「先生、杏の種を食べている民族は他にもいるのですかね?」
とガンの臨床医がいった。
まあ私は専門ではないからわからんがおそらくフンザ人だけだろう。
アンズの種が主食だとは他に聞いたことがないとクレブス博士は笑った。
だが結果的にはそれが彼等の健康と長寿を可能にさせることになったアミグダリンですね。
そうだなどう考えてもフンザにガンがないのはビタミンB17のガン抑制作用しかないだろう。
それに野生同然の自然食もガンの発生と増殖を抑えているのかもしれんなあ。
それと年齢の割には血管の動脈硬化が一人も見当たらん。
それが不思議だ。
とクレスブス博士は首をかしげた。
何しろ160歳で10代の綺麗な血管だからね。
肉食をしないのもその要因だろう。
それと彼等は文明人のようにほとんど有害な化学物質が入っている加工食品や農薬の野菜を食べない。それも大きいだろうな。
原始的な自然農法だ。
先生私が案内された野菜畑には雑草が2mほど高く茂っていましたよ。
と若い人類学者が少し笑いながらいった。
ガンだけでなく心臓病や・糖尿病、腎臓病などの慢性病がほとんどないですね。
それともう一つ皮膚病がないそれもアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎が見当たらん。
2万人の検査してもだ。
医学の常識では考えられない。
と皮膚病の専門医がいった。
ここでは我々が住む文明の現代医学が通用しないのかもしれんとクレブス博士が。
浅黒い唇を斜めに歪めて笑った。
分析しますと貧血も栄養失調もほとんどありませんね。
視力も驚くほどいい。
白内障、加齢性黄斑症もない。
つまり・病気らしい病気がないんですね。
と生物学者はいった。
ある意味で我々は次元の違う恐るべき世界に来ているのかもしれん。
とクレブス博士が少し笑った。
彼等の血液成分を厳密に分析したのですがビタミンAの濃度が国際単位が現代人の1万倍をは超えてますよ。
しかし見たかね160歳の長老が200キロの岩を頭の上に軽々と持ち上げていたろう。
あれにも私は度肝を抜かれたな。
とクレブス博士が笑った。
あれは重量上げのオリンピックレベルだよ。
とにかく物凄いことはがりだ。
私も2日前に村の広場で運動競技を楽しんでいたのですがその時村一番の足自慢の若者が100メェトルの短距離で時間を測ると10秒を軽く切ってましたね。
肉眼ですが彼は何度か走ったのですが3回目は足が早すぎて疾走する姿が見えませんでしたよ。
姿が見えないほど早かったわけだね。
とクレブス博士は言った。
何度か練習させれば100メェトルの短距離でオリンピック世界新記録が出る可能性がありますね。
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